
プロテニス界で「元世界1位のあの選手が、なぜこんなに低いランキングなのに本戦に入っているの?」と不思議に思ったことはありませんか?その際、名前の横に書かれているのが「PR」という文字です。
こんにちは、テニスメモ管理人の武内蔵人です。今回は、怪我に苦しむ選手たちにとっての救済処置である「プロテクトランキング(Protected Ranking)」について解説します。この仕組みを知ると、ベテラン選手や怪我明けの選手の「復活劇」がより深く理解できるようになりますよ!
1. PR(プロテクトランキング)とは?「公傷制度」の基本
プロテクトランキング(PR)とは、怪我や病気によって長期戦線を離脱せざるを得なくなった選手が、「離脱直前のランキング」を復帰後の大会出場権として一定期間利用できる制度のことです。WTA(女子)では「スペシャルランキング(SR)」と呼ばれることもあります。
テニスは毎週試合に出なければポイントが失効していくスポーツです。もしこの制度がなければ、怪我で半年休んだ選手はランキングがほぼゼロになり、元トッププレーヤーであっても予選のさらに下の大会からやり直さなければなりません。それを防ぐための「公傷制度」と言えます。
2. 制度を利用するための主な条件
PRは誰でもいつでも使えるわけではありません。ATPやWTAの規定により、厳格な条件が定められています。
- 離脱期間: 最低でも「6ヶ月以上」試合に出場していないことが条件となります。
- 申請時期: 最後の試合から半年が経過し、復帰を予定するタイミングでツアーに申請を行います。
- ランキングの算出: 離脱した日から最初の3ヶ月間の平均ランキングが採用されるなど、当時の実力を反映する計算がなされます。
3. 利用できる「回数」と「期間」の制限
PRは無制限に使える魔法のカードではありません。離脱していた期間に応じて、利用できる回数が決まっています。 離脱期間 利用可能な大会数 有効期限 6ヶ月以上〜12ヶ月未満 9大会まで 復帰から9ヶ月間 12ヶ月以上 12大会まで 復帰から12ヶ月間
※規定は改定されることがあるため、主な目安として参考にしてください。
4. ここが重要!PRで「シード」は取れない
PRを利用する上で、ファンが最も誤解しやすいポイントがここです。PRは「エントリー(出場権)」には使えますが、「シード権」の決定には使えません。
たとえPRを使って世界10位扱いで本戦に入ったとしても、現在の実際のランキング(エントリーランキング)が圏外であれば、1回戦から第1シードの選手と当たる可能性があります。これが、怪我明けの元王者が初戦から強敵と激突する「ドローの爆弾」となる理由です。
5. 過去の有名なPR活用事例
この制度のおかげで、私たちは多くの名選手の復活劇を目にすることができています。
- ラファエル・ナダル: 長期離脱後、PRを使用して全仏オープンなどのビッグトーナメントに出場しました。
- 錦織圭: 度重なる手術からの復帰際、PRを活用してATPツアーの舞台に戻ってきています。
- 大坂なおみ: 出産による離脱後、スペシャルランキングを利用してグランドスラムへの復帰を果たしました。
まとめ:選手へのリスペクトが詰まった制度
PR(プロテクトランキング)は、怪我という不運に見舞われた選手たちが、再び自らの実力を証明するチャンスを公平に与えるための素晴らしい仕組みです。
「PR」の文字を見かけたら、それはその選手が「長いリハビリを乗り越えて、ようやくコートに戻ってきた」という証でもあります。その背景にある努力を想像すると、一戦一戦がより感動的に見えてくるはずです。
次は「SE(スペシャルイグザンプト)」という、これまた特殊な出場権についても解説しましょうか?テニスのドロー表の謎、一緒に解き明かしていきましょう!